【ボツ】書籍は物価の優等生?ー出版業界の通説を疑う②
2週間空いてしまいました。今年もよろしくお願いします。
さて、前回は
- 「物価の優等生」とは、価格の上昇率が国内の物価上昇率と比較して低い商品のこと(海外の価格との比較ではない)
という点を確認し、
- 「日本の書籍は本当に『物価の優等生』だったのか/今もそうなのか」という問いを、日本の消費者物価指数(以下CPI)と書籍平均価格を時系列で比較することで批判的に検討する
というこのシリーズ記事の目的を確認しました。
ではでは、さっそく分析に入っていきます。
まず、日本のCPIと書籍平均価格(税抜、加重平均)の推移を示します。
ちなみに出典は以下の通りです。
https://www.stat.go.jp/data/cpi/ www.stat.go.jp
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出版科学研究所 [編]. 出版指標年報. 2021 年版, 東京, 全国出版協会出版科学研究所, 2021, 392p.
図1より、CPIと書籍平均価格の両方について、1995 年ごろまでは上昇傾向にあったが、それ以降は横ばいとなっていることがわかります。
次に、1970 年を 100 とした CPI と書籍平均価格の指数の推移を図2に示します。
これは、2つの指標の「上昇率」を明示的に比較するためです。今回使う消費者物価指数はもともと2015年を100としているので、それを更に加工するのもへんな話ですが...解釈上の問題はそんなにないはず。
図2より、1974 年まで CPI と書籍平均価格の増加率はほぼ同じであったが、1974 年以降は書籍平均 価格の増加が鈍化したことがわかります。
また、両者は1995 年頃からほぼ水平に並行しています。
そこで、データセットを 1974 年と 1995 年を境に3つに区切り、さまざまな期間での CPI と書籍平均価格の増加率を表1に示しました。小数点以下は四捨五入してあります。
表1より、1970 年から 1974 年までは CPI と書籍平均価格はどちらも 1.5 倍近くに増加しており、両 者の増加率にあまり差はないです。
1974 年から 1995 年にかけて、CPI は 2.02 倍に増加していますが、書籍平均価格の増加比は 1.44 倍であり、CPI 増加率は書籍平均価格増加率の 1.40 倍となっています。
そして 1995 年から 2020 年の直近 25 年にかけては、書籍平均価格の増加率が CPI増加率よりも 1.04 倍高いです。
...と、ここまでで分析パートは終わりです。次の記事では考察と結論を述べます。なんとか投稿頻度を維持したい...ではまた来週〜